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工場・倉庫の安全対策DX講座 vol.3

平時の入退管理が、BCP・安全・労務DXの「共通基盤」になる理由

2026.02.06

平時の入退管理が、BCP・安全・労務DXの「共通基盤」になる理由のイメージ
この記事で分かること

BCP・安全管理・労務管理――目的が違うこの3つは、担当部署も仕組みもバラバラになりがちです。その結果、現場の入力や確認が重複し、運用負荷が膨らむケースは少なくありません。
この記事では、入退ログを「共通の起点」として整理する考え方と、一本化する際の判断基準・落とし穴を解説します。

1. BCP・安全・労務が「別プロジェクト」になる現場の実態

vol.1では「点呼が終わらない」構造的な要因を、vol.2では入退管理方式の向き不向きを整理しました。ここからは視点を一段上げて、BCP(有事)に備える仕組みを、平時の安全管理や労務管理にもつなげられないかという問いを考えます。

工場・倉庫では、BCP・安全・労務がそれぞれ別の担当部署で、別のツールを使い、別のプロジェクトとして動いているケースが少なくありません。

たとえば、こんな状況です。

  • BCPは総務部が安否確認サービスを導入し、安全管理は安全衛生部門が危険エリアの入場制限を紙台帳で運用し、労務は人事部門が勤怠システムで打刻管理をしている
  • 協力会社の入場履歴が部署ごとに分散していて、有事に「今、敷地内にいる可能性がある人」を横断的に確認しようとすると、集計に時間がかかる

どの仕組みも、それぞれの目的に対しては機能しています。ただ、現場から見ると「同じ人の出入り」を複数の仕組みに別々に入力・確認しているケースがあり、ここに運用負荷が積み重なりやすい構造があります。

2. なぜ仕組みが分かれるのか――目的・評価軸・運用の違い

BCP・安全・労務の仕組みが分かれやすいのには、はっきりした理由があります。それぞれの根拠となるガイドラインや法令が異なり、目的と評価軸が違うからです。

BCP(事業継続)

内閣府の「事業継続ガイドライン」が示すように、有事における事業の継続・早期復旧が目的です。安否確認や残留者把握は、その初動にあたります。(注1)

安全衛生

厚生労働省の「労働安全衛生法」に基づき、危険の回避と管理体制の確立が目的です。危険エリアへの立入制限、保護具の着用確認、巡回記録などが具体的な運用になります。(注2)

労務管理

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に沿って、勤怠の正確な記録と適正管理が求められます。(注3)

このように目的が違えば、担当部署が分かれ、評価軸も異なり、結果として入力・確認の運用が別々に設計されるのは自然な流れです。問題は、「別々であること」そのものではなく、現場の入力や確認が重複し、運用負荷が膨らんでいないかという点にあります。

3. 判断基準:データ起点を一本化できるか

では、BCP・安全・労務を「一つの基盤」で考えることは本当に可能なのか。ここでは、入退ログを共通基盤にできるかどうかを見極めるための判断基準を整理します。

一本化を検討できる条件:

  • BCP・安全・労務で、同じ人やエリアの出入りを見ている
  • 現場の入力や確認に、明らかな重複がある
  • 入退ログを共通の起点として扱える運用設計が描ける

事前に確認しておくべきこと:

  • 例外入場(工事業者・来客・臨時応援)を、日常運用の中で処理できるか
  • 危険エリアや深夜帯など、優先して把握したい条件が明確か
  • 既存の仕組みを否定せずに「補強」する形で設計できるか

vol.1で「電話やチャットを否定せずに補強する」と書いたのと同じ考え方です。BCP・安全・労務の各仕組みを置き換えるのではなく、入退ログという共通の起点を加えることで、それぞれの運用を底上げできるかどうかが分岐点になります。

4. 別々の仕組み vs 共通基盤――現場負荷と説明コストで比較する

別々の仕組みで運用する場合と、入退ログを起点に整理する場合を、現場負荷と説明コスト(社内稟議・監査・訓練)の観点で比較します。

観点 別々の仕組みで運用 入退ログを起点に整理
現場負荷 入力・確認が重複しやすい 入力の重複を減らしやすい
説明コスト 稟議・監査・訓練の説明が部署ごとに分散しやすい 共通のデータ起点があると説明を整理しやすい
例外対応 例外入場が手作業になり、記録が散らばりやすい 例外運用を共通化できる余地がある

もちろん、すべての現場で一本化できるわけではありません。
ただ、「同じ人の出入りを複数の仕組みで別々に記録している」状態であれば、入退ログを共通起点にすることで改善の余地があるかを検討する価値はあります。

入退ログで見える化しやすい項目の例

入退ログが共通基盤として機能すると、以下のような情報を横断的に活用しやすくなります。

残業・深夜残留の発生傾向

労務管理の適正把握に活用

危険エリアの滞在履歴

安全衛生管理の記録として活用

協力会社の入場履歴

BCP初動時の残留者把握に活用

立入制限エリアの通過ログ

セキュリティと安全管理の両方に活用

5. 落とし穴:目的混在と例外運用

入退ログの共通基盤化には、注意すべき落とし穴もあります。

目的の混在で要件が膨らむ

「BCPにも使いたい、安全管理にも使いたい、労務にも使いたい」と欲張ると、要件が膨らみ、システムが複雑になり、かえって現場負荷が増えることがあります。最初から全部を狙うのではなく、優先順位をつけて段階的に広げるほうが定着しやすい設計になります。

例外運用が設計されないと、ログが欠落する

工事業者、来客、臨時応援など、正規の入退フローに乗らない人の扱いを事前に決めておかないと、肝心なときにログが抜けます。vol.1で触れた「点呼対象リストに入っていない」問題は、まさにこの例外運用の不備から生じるものです。

部署ごとの運用が残り、ログが統一されない

共通基盤を導入しても、各部署が従来の運用を並行して続けると、結局データが分散したままになります。導入時に「どの入力をどこに一本化するか」を関係部署間で合意しておくことが重要です。

6. 入退ログを「共通基盤」にするための条件整理

入退ログを共通基盤として使うには、ログが「自然に・確実に・止めずに」蓄積される仕組みが前提になります。

vol.2で整理した方式比較の視点を振り返ると、以下のような条件が浮かびます。

ハンズフリーで通過ログを取りたい現場

止まる動作が増えると、共通基盤としての運用が定着しにくい。

汚れや粉塵で接触操作の負担が大きい現場

読取不良が頻発すると、ログの信頼性が下がる。

協力会社・臨時入場者も含めた運用が必要な現場

「社員だけログが残る」では共通基盤として機能しない。

こうした条件が揃う現場では、セミアクティブRFIDを使ったハンズフリー入退管理が有力な選択肢のひとつになります。

この記事のまとめ

本稿のポイントは、以下の4点です。

  • BCP・安全・労務は目的が違うため仕組みが分かれやすいが、入退ログを共通の起点にすることで、現場の重複負荷を減らせる余地がある
  • 一本化の判断基準は「同じ人・エリアの出入りを見ているか」「例外運用を回せるか」
  • 落とし穴は「目的混在による要件膨張」と「例外運用の不備によるログ欠落」
  • ハンズフリーが要件の現場では、セミアクティブRFIDが有力な選択肢になる

次回は、ハンズフリー要件と「止まる動作」が現場でどう負担になるかを整理します。

参考(脚注)

安全対策型ハンズフリー入退管理の仕組みを知る

「止まらず通れること」が要件になる現場向けに、セミアクティブRFIDを使った
「安全対策型ハンズフリー入退管理」の仕組みをご紹介しています。